2025年6月8日(日)、重要文化財・旧長谷川家住宅(長谷川邸)で、日本髪の結髪イベント「髪結い@長谷川邸」を開催しました。5回目となる今回の題材は、喜多川歌麿の「藤棚下の遊女たち」。
寛政7年(1795)ごろ制作された三枚続の大判錦絵で、大河ドラマ「べらぼう」で話題の「蔦重」こと蔦屋重三郎が版元。吉原・仲の町に設えられたと考えられる藤棚の下でくつろぐ遊女たちが描かれています。各絵の背景に薄墨が入り、中央絵では提灯に明かりを灯している女性が描かれていることから、夜見世が本格的に始まる前の光景と考えられます。

この作品はボストン美術館に三枚揃っているのですが、今回は左絵・右絵がメトロポリタン美術館、中央がホノルル美術館、という大英博物館の歌麿展(2007)の組合せを紹介しました。メトロポリタン美術館が所有する左絵には林忠正のコレクション印が残ります。浮世絵鑑賞のポイントとして押さえておきたいところ。
実演では、右絵の再現にチャレンジ。女性たちが凛と描かれています。女性の髪型(特に髷や髪飾り)や衣装(着物の柄や帯模様)が三者三様でとても面白く、見ていて飽きませんね。今回は画面中央、横兵庫の花魁が対象です。いつか三人同時再現してみたいです。
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髪結いは鳥島悦子さん(縁-enishi-代表)、モデルは伴智佳さんです。進行と解説は担当学芸員が行いました。会場は立見が出るほどの満員御礼状態となりました。“越後の長谷川様”効果でしょうか?
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これは髷(横兵庫)を整えているところ。作品に描かれている横兵庫は、上部が伸びて投影形が三角形状になるタイプ。しかも長辺が反っています。歌麿に限らず描かれている作品が多くない髪型です。後ろ姿の絵も担当は見たことがありません。ちょっと難しかったですね・・・。伴さんのうなじに施された薄化粧にもご注目ください。
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髪が結い上がったところ。完成です! やはり建物の雰囲気と合います。この実演を長谷川邸で行う意義を少しでも感じていただければと思います。

さて、いよいよ絵の再現に入ります。
今回は縁側を縁台に見立て、その奥の鞘の間に藤棚を設えてみました。この藤棚、午前中の来館者の方からご意見をいただきながら高さの調節をしました。ご協力ありがとうございました。
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和装の参加者からご協力いただいた“なりきり「藤棚下の遊女たち(右絵)」”。6名の方からご協力いただき、3カット撮影したうちの一枚です。前結びの遊女になりきるべく、帯を前に回して撮影に応じてくださった方も!みなさん、ありがとうございました。
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最後はスタッフで記念撮影。前回2024年の題材「庭中の涼み」の左絵に書かれた狂歌(甜瓜 鬼一口の涼み台 女の中の豆男とて:垣本只住))を思い出します。今回も担当の“見たい・やりたい”にお付き合いいただきありがとうございました。

実は長谷川邸、令和6年能登半島地震で被災しており、ようやくこれから災害復旧工事に入ります。工事の進捗によっては来年度の髪結いイベント開催が難しいかもしれませんが、開催の際にはまたぜひご参加ください。よろしくお願いいたします。
最後となりますが、参加者が予想をはるかに上回り、配布資料が全員に行き渡らなかったようです。深くお詫びいたします。お手数ですがこちらからダウンロードをお願いします。
(文化財研究室)