平成23年度生物標本・自然科学写真展示会


 長岡市立科学博物館では、新潟県内の児童・生徒の皆さんを対象に、毎年、生物標本・自然科学写真展示会を開催しています。
  平成23年度は130件の出品があり、展示会には518人の入場がありました。また、出品者懇話会には30人の方が参加され、研究や標本づくりについて話し合う場となりました。ありがとうございました。
今後も継続的に採集・研究を続けて大勢の方に参加いただけますよう、お願いいたします。
  審査の講評を掲載しますので、今後の活動の参考にしてください。

平成23年度 生物標本・自然科学写真展示会
会場:長岡市中央公民館大ホール(長岡市柳原町2-1)
日程:出 品 受 付  10月 21日(金)〜22日(土)
    審     査  10月23日(日)
    展     示  10月24日(月)〜11月6日(日)
    出品者懇話会 11月6日(日)
    表     彰  11月6日(日)
    優秀作品展示11月8日(火)〜20日(日)

平成23年度生物標本・自然科学写真展示会出品案内(PDF)

作品例紹介(PDF)

展示会のようす 懇話会のようす
 展示会のようす(H23)              懇話会のようす(H23)

優秀作品展示のようす
優秀作品展示のようす(H23)

平成23年度講評(PDF版はこちらから)

植物標本の部

審査長  新潟県立長岡高等学校                    笹川通博
        新潟県植物同好じねんじょ会事務局長        関 省吾
        上越教育大学大学院学校教育研究科准教授  五百川裕
        国土交通省水辺の国勢調査アドバイザー     西山邦夫
        新潟県立阿賀野高等学校                  鷲尾和行

 今年度の植物標本の部の出品状況は、小学校13校20点(昨年度12校22点)、中学校6校29点(昨年度4校14点)でした。昨年度と比べて、小学校でやや減少し、中学校で増加しました。中学校のますますの増加と、小学校の奮起を期待します。この標本展示会も60回を迎え、記念の冊子も発行されました。その冊子にもありましたが、熱心な先生、指導者との出会いが、その人の人生を変えます。児童、生徒のがんばりと同時に、お忙しいとは思いますが、先生方のご指導にも期待します。また、こうした生物の採集、標本作りが自然破壊、生命殺りくにつながるのではという考えもありますが、個人が場所や量をわきまえて行えば、その影響は微々たるものです。それよりも、生物の採集、標本作りを通して、生物や自然を理解し、自然を大切にする精神や行動が身に付き、益となることの方が大きいです。
 今年度も審査員で話し合ったことを以下に書きます。
1.よかったところ
 長期間、場合によっては2年間にわたる観察や採集が多くなりました。レポート、資料が多くなり、内容も充実してきました。特に、デジタルカメラの普及で、小中学生でも質の高い写真が撮れるようになりました。また、規定の標本枚数に収まるように、テーマをよく考えて絞ったものも目立つようになりました。
2.改善して欲しいところ:標本について
 台紙の大きさが小さいもの、薄いものが目立ちました。標本を台紙にする意義は、標本が痛まないようにするためと、散逸を防ぐためです。A3版(新聞紙の片面の半分)の厚めの用紙(ケント紙など)を、縦方向に使ってください。また、標本を冊子のように綴ってあるのが、今年は特に目立ちました。冊子のように綴ると、見るときに標本が痛みます。標本は綴らず、箱などに収めてください。これも毎年のことですが、植物を貼るときは、セロテープなどの粘着テープを使うのではなく、面倒でも紙テープにのりを付けて貼ってください。草本は根まで取るのが基本ですが、根を取るあまり、小さいものを採取しないようにしてください。また、シダ植物は葉柄基部が大切ですので、根元から採ってください。乾燥剤を入れるときは、植物の入っている袋に直接入れないでください。標本が傷みます。とにかく、標本が傷まないようにするにはどうすればよいか、考えてください。
3.改善して欲しいところ:ラベルについて
 ラベルは、標本にとって非常に大切なものです。ラベルのない標本はほとんど価値がありません。採集地は、県市町村名から書いてください。「家の庭」などというのは駄目です。採集日も、きちんと年月日を書いてください。数字だけ書くと、年なのか月なのか日なのか、わからなくなります。学名は無理して書く必要はありません。学名を書くのなら、細かい決まりがありますので、それをよく理解して書いてください。ラベルの貼る位置、様式を統一してください。また、少なくとも中学生では、鉛筆ではなく、ペンでラベルを書いてください。
4.改善して欲しいところ:テーマ・時期・名前調べについて

 出展枚数が決まっていますので、その中で扱えるように、テーマをよく考えて絞ってください。「○市の植物」というような大きなテーマでなく、例えば「○市△地区の春から夏の植物」などのように具体的に絞るとよいです。表題、タイトル、サブタイトルは、あまり長いものにせず、的確に短く表現してください。せっかくよいテーマ、表題なのに、標本やレポートがそれに伴ってないものがあり、残念でした。採集時期も、夏休みだけの「やっつけ仕事」にならないように、色々な季節、時期に採集してください。植物標本は乾燥に手間と時間がかかります。新聞紙を換えるときに、葉や枝などの形を整えます。時間の余裕を見て標本作りに取り組んでください。自分で名前を調べることは大切ですが、それが間違っている可能性もあります。独りよがりにならないように、植物をよく知っている先生や、植物の名前を調べる会などで、必ず名前を確認してください。

 

昆虫標本の部


審査長  新潟県立加茂高等学校    林 克久
        越佐昆虫同好会会員      山本敬一
        越佐昆虫同好会会員      須藤弘之
        胎内昆虫の家主任        遠藤正浩

1 出品状況など
 昆虫標本部門は、昨年より出品学校数、出品件数共増加しました。特に小学生の出品学校数が5校増加しすそ野が広がったこと、継続して採集を続けている人が多く、うれしく思います。
 今年は、東日本大震災や7月の新潟・福島豪雨などの自然災害に見舞われ、そこに住む動植物もまた大きな被害や変化を受けているはずです。震災後、自然改変社会から自然共生社会への転換が叫ばれています。この自然共生社会を実現するには、私たち一人一人が家の周りなどの身近な生き物や自然を知り、地域の自然をかけがえのないものとして大切にすることが必要です。
近年は特に、里山の崩壊、温暖化、外来生物の侵入などで、急速に地域固有の自然が変化し、生物多様性が失われつつあると言われています。この標本展示会も60周年を迎えましたが、当時普通に採集できた種がいなくなったり、逆に当時の希少種が普通に見られるなどの変化があります。標本は採集した場所のその時代の環境を表す指標となるものです。今年の出品作品は、地域の身近な昆虫を何年間も調べてまとめた力作が多く、喜ばしいことです。また、温暖化による種組成の経年変化を示すような、ツマグロヒョウモンやウラナミシジミなどの貴重な標本がありました。
デジタル化が進む現代こそ、体力を駆使して昆虫を採集し、標本作成で集中力を高め、知力を結集して図鑑と格闘し種名を調べるという一連のアナログ的活動は、子どもたちの生きる力を養う一助となるはずです。総合的な学習の時間などを利用して、学校単位で昆虫を調べることは、地域の自然を知る教材ともなります。学校単位でも昆虫の研究が継続していくと素晴らしいものになると思います。
 パソコンを利用したレポート・リスト・ラベル・グラフの作成、デジタルカメラでの記録、インターネットを利用した情報収集、ホームページでの情報発信などが普通になりつつあります。毎年お話していますが、小学生の低学年の場合も、できるだけ保護者の援助を最小限にお願いします。本人の手書きのほうが虫への情熱が伝わってきます。自然の中での子供たちの生き生きした姿が目に見える標本、レポートでありたいものです。

2 良い標本づくりを目指しましょう
(1)基本的な標本作成技術を学びましょう
生きているときに近い色や形でできるだけ長期間保存できるように作成することが、命をいただいた虫への恩返し。トンボなら腐食、退色が始まらないうちに出来るだけ早く標本にすること。チョウなら鱗粉を落とさないようにして展翅板で前翅の後端を直線にそろえること、甲虫なら展足板で脚をそろえることなど。図鑑や上級学年の受賞作品、博物館等の標本作製教室を活用して学んでください。長く保存するには標本箱もしっかりしたものを使いましょう。
(2)1個体ずつラベルをしっかり
採集地、採集年月日、採集者名を記したラベルが、1個体に1枚ずつ付いていることが標本の価値になります。採集地や採集年月日をはっきりと、採集地名は市町村名より詳しく記してください。また、標本の邪魔にならないように小さいラベルを。種名も図鑑や博物館などを利用して、できるだけ正確に調べましょう。
(3)テーマや目的を決めよう
収集した標本で何を調べたいのかという動機や目的をはっきりさせましょう。採集する昆虫類、場所、季節、採集の仕方、標本箱への並べ方などを工夫してください。
(4)レポートをしっかり書こう
レポートの内容で、標本の評価も変わります。@目的、A方法(場所、季節、採集の仕方など)、B結果(採集リストなど)、C考察(わかったこと、わからなかったことなど)と分けて書き、昆虫との関わりがいきいきと書かれていれば素晴らしいです。写真はどうしても必要な環境写真や拡大写真などにとどめ、図鑑通りの写真や記念写真は控えましょう。

3 今年度印象に残った作品

  1. 長岡市教育長賞に輝いた、柏崎小学校6年佐藤駿介君の「八石山のチョウ」は、柏崎市の八石山に生息するチョウを、6年間にわたり観察してきた集大成の大作です。もちろん今年度の標本は全て12回もの登山による採集ですが、見事な標本づくりの技術です。2008年からウラナミシジミやツマグロヒョウモンが採集されていることなど、八石山のチョウの経年変化がわかり貴重な記録です。レポートにもこれらの変化について書かれています。佐藤君が身近な昆虫としっかり関わり合っている様子がうかがえ好感がもてます。
  2. 枇杷島小学校5,4年重野太陽・大地君の「ぼくたち兄弟のトンボぬけがら採集」は、柏崎近郷の池から採集した46種類のトンボのぬけがら(脱殻)の標本です。文献で採集できる場所や時期を調べ、羽化の時に性別を見分けてぬけがらを採集できるよう早朝に出かけるなどの工夫をしています。また、種の特徴が分かるよう、背面だけではなく腹面からも見せるようにしたり、イトトンボ科などの小さい種も採集し良い標本です。
  3. 長岡市立東中学校2年宮川百々子さんの「長岡近郊のアリ」は、小学5年生から4年間に採集した4科18属36種のアリ+アリグモ、アリバチ合計601個体の、努力の跡がうかがえる良い標本です。クロオオアリの結婚飛行など、細かな生態観察をレポートによくまとめてあります。
  4. 直江津中学校3年木村和真君の「トンボの採取難易度」は、意表を突くタイトルで、重厚な手作りの標本箱に多くの種が整然と並び圧倒されます。新潟県初記録のスジボソギンヤンマ、県内6カ所目となるアオモンイトトンボ、局所的な南方種ネキトンボなど貴重な記録が多く含まれています。
  5. 小合東小学校4年井浦礼生君の「夏休みに見つけたかわいい虫くんたち」は、チョウから甲虫、ハエまでいろいろな昆虫を、ていねいにきれいで楽しそうな標本にしてくれました。
  6. 長岡市立大島小学校2年裄V悠さんの「ジャコウアゲハのしいく」は、羽化の連続写真、幼虫の成長に伴うフンの大きさの違いなど、ジャコウアゲハの飼育の様子を良くまとめ、研究発表のような標本箱に仕上がっています。

 4 注目すべき種や記録
・スジボソギンヤンマ(ギンヤンマ×クロスジギンヤンマ) 上越市国府,1♂,2008.8.20(木村和真)
・アオモンイトトンボ 上越市国府,1♂1♀,2008.8.17(木村和真)
・ネキトンボ 上越市国府,1♂,2011.8.16(木村和真)
・オナガサナエ 十日町市田川,1♂,2011.7.23、1♀,2011.7.10、1♀,2011.9.17(宮澤大斗・和希)、十日町市松之山新山,1♀,2011.8.13(小野塚航太)
・ウラナミシジミ 柏崎市藤井(小野塚渉)、柏崎市八石山(佐藤駿介)、小千谷市吉谷(石曽根悠斗)、十日町市田川台(宮澤大斗・知希)
・ツマグロヒョウモン 長岡市東山(木村颯馬)、国上山(大岩祐太)、小千谷市山谷(石曽根悠斗)、柏崎市八石山(佐藤駿介)

その他の動物標本の部

審査長  中越教育事務所指導主事  金安健一
        日本クモ学会会員        水澤正明

 昨年の秋は、連日のように新聞が熊の出没を報じていました。その中で、塩沢で確認された、雄熊が3日間にわたり小熊を食べつつけていたとの報は本当に驚かされました。今年は、山地のナラ枯病は続いているものの、ドングリやブナの実りが良いためでしょうかこれまで熊の出没のニュースは聞いていません。昨年度に捕獲されすぎたのでしょうか。少し心配でもあります。
  さて、皆さんはシジミを知っていますね。このシジミには、淡水生のシジミと海水と淡水が混じり有っている気水域で生息するシジミがいます。このマシジミに新潟平野では異変がおきています。当初大河津分水から信濃川や中之口川、新川を源とする平野部だけがタイワンシジミに置き換わったと考えていましたが、大河津分水より信濃川の上流部である長岡市、小千谷市、魚沼市のシジミも全てタイワンシジミだということを確認されがっかりでした。しかし、10月に湯沢町でマシジミの生息を確認し安堵しました。
貝類の研究者の格言に、「いつまでも 居ると思うな 貝と親」というのがあります。広い新潟平野のどこを探しても生息していた、マシジミはどこにもいなくなっているのです。河川や用水路にシジミがいましたら注目してほしと思います。
今年は、東日本大震災の津波による原子力発電所の事故もあり、遠く離れた新潟県の海水浴場の利用が激減したとの新聞記事がありました。子どもたちの夏休みの海は波静かな日が続き、打ち上げ貝が少なかったように思います。貝の標本出展数は昨年度5点でしたが今年渡は11件と増加しました。またクモの出展数は、昨年度の7点から5点に減少しましたが、マダイの骨格標本やシロギスの耳石等の作品もあり充実した年となりました。
標本は、図鑑等の書物と違い生物をありのままに教えてくれます。書物の記載や解説を読みながら一つ一つ確認を行い、全てが一致してはじめて同定できます。この学びにより、現在の教育が思考力を養うために大切にしている、比較の考え方を知らない内に身に付け、その意義を教えてくれます。さらに、生き物をありのまま観察する過程で、自然を生態学的な視点から深く学びます。
長岡市長を受賞した小千谷中学校の田中一樹さんの作品は、昨年度調べた水田環境の中で多くのクモがどのように棲み分け、生態系を構成しているかを追究した作品をさらに、深化発展させ、自宅のある小千谷市時水の全域の造網性、地上性、地中性等のクモ240種を明らかにした大作であり、2010年前後の自然を表しているデーターとなると高く評価しました。また、その標本も60回生物標本展を代表する研究を裏付ける資料となる標本価値高い卓越した作品です。
長岡市教育長賞を受賞した川村翔太さんは、連続教育長賞を受賞しました。昨年度までの研究をふり返り、新潟県での研究が遅れている10mm以下の微小貝にチャレンジし75種の標本を見やすくした拡大写真とデーターラベルと共にまとめた作品であり、発展性があると高く評価しました。
次年度に向けて
1 注意してほしいこと
  (1) 子どもたちの作品展です。小学校低学年の標本に、データーを親が書いている作   品がありました。子どもが自然を学ぶ場と考え、親や教師は黒子に徹してほしいと考えています。
  (2)  高学年や中学生は生きている貝を採取させ、貝殻採集ではなく生きた貝の採集に   心がけさせ、環境と貝の視点や生態や行動、生理等を学ばせてください。そして、それを調べた貝として標本を位置づけると、標本価値の高い作品になるのです。
  (3)  標本は一つ一つラベルとともにビニール袋やケース内に入れ標本箱に入れいくだ     さい。データーの紛失した標本は、標本価値が有りません。また、標本ラベルに採集者名のない作品が今年度特に目立ちました。データーラベルに採集者名まで必ず入れるよう、多くの場での指導を望みます。

自然科学写真

審査長 全日本写真連盟関東本部委員    町永竹松
      元長岡工業高等専門学校教授    山口 肇

 本年度お科学写真の部では、小学校で9点、中学校で14点の作品の応募がありました。デジカメの普及と共に、応募作品の数が増加してきているように感じます。
応募作品の写真については、デジタルカメラの機能充実に伴い作品の出来具合はどんどんレベルアップしてきています。撮影の際に伴う技術的な問題をカメラ自体が解決してくれるためと思います。このことは、カメラ操作をする人の意図がそれだけ強く問われることにもなります。カメラ操作に無駄なエネルギーを消耗しなくともよい分、このエネルギーを作品の構成に振り向けることができるからです。このことをはっきりさせておかないと応募作品が単なるきれいな写真の羅列となってしまう恐れがあります。
今回は顕微鏡写真による応募が数点ありました。どれも露出等の技術的な問題は見られなかったことはよいことですが、作品の中には対象物の大きさが写真を見ただけでは判らないものがあり、今後の宿題として頂けたら嬉しいです。撮影の際に使用した顕微鏡の倍率表示だけでは対象物の大きさは判りません。プリントアウトした写真の大きさを変えると、それに伴って倍率は変わりますから、真の対象物の大きさは判定できないことになります。写真の引き伸ばし倍率に関係なく対象物の大きさが判る表示の仕方を工夫する必要があります。
ルーペを通して撮影した写真の応募もありました。むやみに拡大倍率を大きくしなくともよい対象物の観察にはルーペの使用は一つのアイデアですが、対象物を安定した画像として構成とすることも作品のよしあしを決定するポイントの一つです。折角の作品も、ルーペが手持ちであったせいかあるいはルーペの固定の仕方が不十分だったせいか、画面毎に対象物とルーペの位置関係が異なり、やや見づらい作品となってしまいました。ルーペとカメラとの位置関係が固定される工夫があるとよかったと思います。
応募作品はあくまで自然科学写真であり、その撮影目的は何であるのかを考えながらシャッターボタンを押す必要のあることを忘れないで下さい。写真が綺麗に仕上がることは勿論大切なことですが、それに加えて自然科学写真はその撮影目的をしっかりと持ったものでなければなりません。そうでなければ単なるスナップ写真になってしまいます。
今後の更なる自然科学写真の部への応募数の増加を期待しています。